エスカレーター 右か左か

エスカレーターは、現代社会において欠かせない移動手段の一つとなっている。その使い方には国や地域ごとの文化や習慣が反映されており、「片側空け」というルールもその一例だ。特に、エスカレーターの片側に立ち、もう片方を歩行者のために空けるという習慣は、世界中で広がっている。

そもそものエスカレーター片側空けの起源として、この習慣が最初に始まったのは、ロンドンの地下鉄駅とされている。しかし、その具体的な起源については不明確であり、1944年頃に混雑緩和のために公務員が考案したという説があるのみである。

現在、右側に立ち左側を空ける「右立ち・左空け」は、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、香港、台湾、中国、韓国など多くの国で見られ、一方で、左側に立ち右側を空ける「左立ち・右空け」は、東京を中心とした日本各地のほか、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどで採用されているそう。

日本におけるエスカレーター片側空けの歴史はどうなのかというと、

大阪発祥の「右立ち・左空け」
日本で初めて片側空けが定着したのは大阪で、阪急電鉄が梅田駅でエスカレーター利用時のマナーとして、右側に立ち左側を空けるよう呼びかけたことが始まりとされおり、当時のスウェーデン製のエスカレーターはベルト式で、歩行者が多すぎてすぐに故障してしまったというエピソードもある。

東京発祥の「左立ち・右空け」
一方で、東京では異なる経緯をたどった。1989年頃、千代田線の新御茶ノ水駅では長大なエスカレーターが設置されたが、当初は乗客がランダムに立っていた。しかし、自然発生的に片側空けが始まり、結果的に「左立ち・右空け」という東京独自のスタイルが確立された。また、同じ時期に横須賀線・総武快速線の東京地下駅や新橋地下駅でも同様の現象が起こっている。

片側空けの全国への広がり
この文化は、東京や大阪といった都心部から徐々に広がっていった。東京の場合、1990年代には朝日新聞などでも「欧米では当たり前のエチケットが東京駅で定着しつつある」
と報じられた。一方、大阪では1978年に朝日新聞が「二人並ばず道を空けて」という記事を掲載し、1980年代には京都や神戸でも片側空けの呼びかけが行われるようになった。 1990年代後半には、新幹線の普及とともにこの習慣は全国各地の大都市へと広がった。札幌や福岡、名古屋などでも東京式の「右空け」が一般的になったが、関西圏では引き続き「左空け」の文化が根強く残ったそう。

国ごとの片側空けの習慣を比較すると、通行法との関連が見えてくる。右側通行の国では左空け、左側通行の国では右空けが自然発生的に広がる傾向がある。しかし、ロンドンや香港、大阪のように、行政や鉄道会社が意図的に異なるルールを導入したケースもある。

欧州をはじめとする海外では日本とは逆で右側を走行車線とする国の方が多いため、
実は、大阪のような右立ちが世界標準ということになる。

片側空けのメリットとしては、急いでいる人がスムーズに移動できる、混雑時の流れが整理されるといった点が挙げられる。しかし、一方で、片側に荷重が偏ることによるエスカレーターの劣化や歩行時の転倒リスクのほか高齢者や身体の不自由な人への圧力といった問題も指摘されている。
特に、日本では近年、エスカレーターでの歩行を禁止する動きも出てきており、安全面の観点から見直しの議論が進んでいる。

また、日本では近年「歩かないエスカレーター」の推進が進められつつあり、片側空けの習慣が変化する可能性もある。
そもそもが、歩いて上り下りすることは想定して作られておらず、
ゆえに、エスカレーターの一段は階段の一段より少し高めだったりします。

私も、ついつい急いでいるときはエスカレーターを駆け上がってしまう習慣が身についてしまっているが、今後、エスカレーター利用マナーがどのように変化していくのか、引き続き注目されるべきテーマである。

Profile

Chris·P·Bacon
Chris·P·Bacon
鎌倉生まれ横浜育ち、6年間イギリスに島流し経験あり。
車いじりが好き、サッカーが好き、AKIRAが好き、韓国のある女優さんを推す2児の父。
座右の銘は、駑馬十駕 左右の目は2.0と1.2
好きなサッカークラブチームはリヴァプール
好きな選手はエリック•カントナとガットゥーゾ
東京23区外、東京都の小田舎といわれる地域に住んでます。

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