
Yohji Yamamoto「服を作る」を読んで
早速タイトルとは違う本を紹介する。
ファッションが好きな人は一度は読んだことがあるであろう、哲学者:鷲田清一氏の「ちぐはぐな身体」。
筑摩書房 ちぐはぐな身体 ─ファッションって何? / 鷲田清一著
www.chikumashobo.co.jp

私は学生時代、建築学科の友人の勧めで読んだことがある。
建築の教授はとても面白い人で、「建物の仕事がしたいなら、服の勉強は必ずしなさい。なぜなら、どちらも”中で人が生きていく”ものだからです」と言って、この本を指定教材にしていたらしい。
友人は卒業後、某建築家の弟子になったが数年後に辞めて、今はCOMME des GARÇONSでパタンナーをしている。
私はこの本で、初めて「山本耀司」という人を知った。
当時は深夜放送で雑誌「ファッション通信」のTV版が放送されており、パリファッションウィークの情報が流れていた頃で、偶然そこでYohji Yamamotoのコレクションを見たことがあった。
とにかく黒くて大きくて、モデルが全員ヒールを履かずに歩いていて、裾の揺れが本当に独特の美しさで印象的だった。幼稚な私にはそのくらいの事しかわからなかった。
その後2015年頃に倒産危機における民事再生法申請が大々的に報じられ、表舞台にほとんど出てこないデザイナー本人が記者会見に応じていたのが記憶にある。
そこから、採算度外視の超こだわり国産テーラードだけではなく、ブランドのシリーズを大幅に増やし、PRに本人も奔走し、有名人とのコラボから香水からアクセサリーから車から次々に打ち出し…と、一気にそれまでの「ミステリアスな東洋のトップメゾン」から「ロックスター風イケイケメーカー」に雰囲気が変わっていった。
それを安っぽくなった(大衆向けになった)ということもできるが、周りがそうまでしてでも残したい特別な存在だということだろう。
こうした近年の動きもあってか令和に入ってからも若い子の心をどんどん掴み、コロナの時期には大ブームになるまでに至る。
時代が変わっても人の気持ちを掴み続けるYohji Yamamoto。
同じような黒い服は他にもたくさんある。
彼の何がそんなに特別なのだろうか?
その一端が一番よくわかるのが、本人のインタビューをまとめたこの本、『服を作る』だ。
こちらは雑誌社が企画したかっこいい写真集や愛用している著名人の話などではなく、本人の言葉がそのまままとめられており、一番純粋な形で彼の為人、デザインや服への考え方がわかる。
どうしても、ファッション業界には”イメージを売る”という側面がつよいので、デザイナー本人を過度に神格化して特別なものに見せようとするが、実際にはどんなデザイナーも同じ、一人の職人なのだ。
自分を信じて続けてきたことに時代が追いついて、いつの間にかブランドとして運営されるようになっても、変わらないのは「信念」だ。
特に黒い服に対する思いは、戦後を生きてきたドレスメーカー独特の考え方だと思う。
服が好きな人には、yohjiに興味がなくても一度読んで見てほしい。
読むとわかるが、yohjiはとにかく女性が好きなのだ。
それは見た目が綺麗とか、若いとか関係なく、その存在全てにひざまづくような大きな愛なのだ。
(実際、Y’s社の社員はほぼ女性で、みんなyohjiさんが「自分に惚れている」と思っているらしい。※噂です)

広告はyohjiを、日本が誇る天才として祭り上げようとする。
Y’sの服を着れば、特別な人間になれるように仕向けてくる。
だが実際はそんな”選ばれし者の世界”のような、大袈裟なものじゃないと思うのだ。
私が持っているY’sは、水玉のスカートだ。
初めて着たときの感覚は今でも覚えている。
とにかくとても孤独な気分が、孤独のままで”良い気分”にさせてくれる気がした。
誰しも一人で生きていることを思い出させ、そのままで居させてくれる服だった。
私の思うyohji yamamotoは、パリコレの高級服でも、青山のセレブが着る服でも、芸能人御用達でもなく、人を孤独なままで守っていてくれる、ただただ優しい服だった。
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