
憂鬱 と ユ・ウ・ウ・ツ
日本語の面白さの一つとして、漢字やひらがなに加えて、カタカナがあることだと思います。
これにより表現の幅がとても広くなるからです。より繊細な表現ができるし、微妙なニュアンスを相手に伝えることもできる。反面、日本語を学ぶ海外の方にとっては悩ましい部分でもあるかもしれません。
たとえば
漢字では「明日」
ひらがなでは「あした」
カタカナなら「アシタ」
意味としては同じでも、文字での印象はそれぞれ微妙に違ってきます。そしてこれには当然、個人差もあるので、そこもまた面白い点。
漢字の場合は「明日」となり、ごくごく普通の一般的な表現。ひらがなの場合は、少しやさしい印象でしょうか。使い方によっては詩的な印象になるかもしれません。
そしてカタカナの「アシタ」になると、かなり書き手の意思や意図も感じます。
これは「貴方」という言葉にも言えることで、ひらがなで書く「あなた」やカタカナの「アナタ」では相手に与える印象も当然変わってくるでしょう。
2024年にSNSで流行った曲に“恋する惑星「アナタ」”という歌がありますが「貴方」や「あなた」では、リスナーに与える印象も違っていたかもしれません。
たとえば漢字で「来夢来人」と書いてみます。もちろんこれは当て字ですが、どこかの町のスナックのような印象です。ネオンライトが頭に浮かんでくる人もいるでしょう。
ひらがなで「らいむらいと」なら、例えば昭和初期にできた純喫茶かもしれない。
カタカナで「ライムライト」と表現すれば、もちろんこれはチャールズ・チャップリンがバスター・キートンと共演した名作映画。あの美しい音楽が頭の中を流れてくる人も多くいると思います。
しかし、デザイン目線で考えれば、「漢字」「ひらがな」「カタカナ」に、さらに書体の選択が加わることで、より幅広い文字表現が可能になります。と同時に、難しさも増すのですが、それを考えるのもデザインに携わる人たちの特権という気がします。

さて、今回のテーマで書くきっかけになったのは、昭和の大スター沢田研二(ジュリー)の1982年発売の「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」というヒット曲でした。
文字通り「憂鬱」という言葉はその意味通りの重いものですが、カタカナの「ユ・ウ・ウ・ツ」になると意味が全く違ってきますし、曲名としてもとても良いですね。
憂鬱な状況には変わりはないのですが、カタカナにすることで物事の捉え方が変わってくるから不思議です。
もし、現実で何か重い言葉(状況)がドーンとあなたに押し寄せてきたら、ひらがなやカタカナに脳内変換すると、なにかがちょっとだけ変わるかもしれませんね。

そして、J-POPに興味のある方はすぐに「沢田研二(ジュリー)」と検索して聴いていただきたい。そしてグループサウンズの時代まで遡って聴くことをおすすめします。
今、海外では日本のCITY POPが流行っているといわれていますが、次にブームがくるのはGS(グループサウンズ)だと個人的な期待も込めて願っています。そのかっこよさに、あなたもよりディープな日本の音楽通になることができるはずです。
















