
与謝野晶子と蝶々の通り道
明治に生まれた歌人、与謝野晶子。その作品の中に、こんな歌があります。
“さしかざす小傘に紅き揚羽蝶、小褄とる手に、雪ちりかかる”
わたし自身、短歌のことは詳しくないのでよくわかりませんが「傘」、「蝶々」、「雪」という言葉が並び、その響きから、その情景が豊かに浮かんでくる気がします。
「小褄」ということなので、この歌の主人公は、着物の小褄をとっている状況のようです。小褄とあるので、自然と着物姿を思い浮かべますが、これは芸者や舞妓を指す言葉でもあるようですね。
わたしは、この歌から、雪の中小さい傘に赤い揚羽蝶が止まった――そんなイメージを思い浮かべたのですが、調べてみると、傘の柄自体が揚羽蝶という見方もあるらしいとのこと。たしかに、雪が降っているような季節に、蝶々が飛んでいるのは、やや不自然な話です。

与謝野晶子の歌は、いろいろな意味にとれるようで、読み手の解釈に委ねられていることも、その人気の一因のようです。読んだことはなくても代表作の「みだれ髪」というタイトルを知っているかたは多いでしょう。
蝶々というと、一つ思い出す話があります。
蝶には「蝶道(ちょうどう)」というものがあるそうです。つまり、蝶々が通る道のことです。
当然、それはわたしたち人間には見ることができません。人でいうところの歩道、といったところでしょうか。初めて聞いたとき、「そうなんだ」と驚いたことをよく覚えています。そのことを知ってから、街で蝶々を見かけるたびに、「わたしは道をふさいでいないだろうか」「蝶々たちの邪魔をしてはいないだろうか」と、つい思うようになりました。もちろん、そんなことは向こう(蝶々)からしたら、どうでも良いことなのですが、それでも、なにか世界を見るレイヤーが一つ増えたようで、わたしにとっては、とても嬉しいことでした。
冒頭の与謝野晶子の歌にある揚羽蝶は、傘の柄を指すもので実際の蝶々を描写したものではないのかもしれませんが、もし揚羽蝶が蝶々の道を通って飛んできて、女性の挿す傘に、ふわりととまったのだとしたら。そう思うと、より臨場感が湧いてきて、その景色が頭の中で鮮やかに広がっていきます。
最近は、小説より詩を読む機会が増えてきました。短歌や詩、俳句等は言葉が少ない分、想像の余地があります。言葉では説明できないのですが、読んだあとの、あの不思議な感覚が好きです。
「何か文章を読みたい。でも小説は長いし大変だな・・・」という方や「夜、寝る前に何か読みたい」という方にはおすすめです。
※与謝野晶子・・・明治11年(1878年)生まれの歌人。代表作は「みだれ髪」等

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”日常を少し違った視点で見てみる”をテーマに
自分の周囲、半径5メートル位にあるものなどについて書いています。
音楽やアート、文学が好きなグラフィックデザイナー。
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