刀剣博物館へ行ってきました

さわやかな初夏の週末、両国にある刀剣博物館へ行ってきました。

刀剣博物館(The Japanese Sword Museum)は、公益財団法人日本美術刀剣保存協会が運営する日本国内でも数少ない日本刀専門の博物館です。

博物館は池泉回遊式の庭園が残る旧安田庭園の一角にあります。
池泉回遊式庭園(Chisen stroll garden)とは江戸時代に発達した日本庭園の一様式です。池の周囲を 1 周しながら庭園を鑑賞するしくみで、京都の桂離宮、金沢の兼六園、東京駒込の六義園、岡山の後楽園などが有名ですね。

今回、『五ヶ伝と五ヵ国の日本刀』(Traditional Swordsmithing of the Five Famed Regions)という展覧会に行ってきました。

五ヶ伝というのは日本における日本刀の五大刀工流派のことです。
日本刀の主な制作地である大和国(奈良県)・山城国(京都府)・備前国(岡山県)・相模国(神奈川県)・美濃国(岐阜県)を発祥とします。

室町時代より代々足利将軍家に仕えた研ぎ師であり豊臣秀吉以後は刀の鑑定も務めた本阿弥家により、それぞれの国の作風は伝法となり制作地ごとの傾向をとらえてまとめあげられ、大和伝(Yamato den)・山城伝(Yamashiro den)・備前伝(Bizen den)・相州伝(Soshu den)・美濃伝(Mino den)の五ヶ伝として系統づけられました。

今回の展覧会では五つの地域に伝わる日本刀作りの伝法とその五ヵ国で活躍した刀工の作品が鑑賞できました。

『大和伝』は古代日本の都であった大和国周辺で活動した流派で、平安時代より発展した最も古い伝法です。寺院の僧兵のために刀剣を作成していたため、装飾性をそぎ落とし、実用性重視の力強い印象の刀が多いのが特徴です。

『山城伝』は平安時代に都を京へ移したことで誕生した流派です。宮中の貴族の刀剣を作刀したため実用性より美しさが重視されていました。細身で、根元から湾曲した腰反りや中央から湾曲した輪反りで、地鉄(じがね)にうるおいのある優美で上品な印象の刀が多く作られました。

『備前伝』の備前国は良質な砂鉄の一大産地で、吉井川流域を主な拠点とした流派です。
古刀期(平安時代末期から室町時代末期・安土桃山時代)において、日本刀の生産量が全国一でした。長い歴史を経て次々と名刀工が誕生しましたが、1590 年の吉井川の大氾濫でほぼ壊滅しました。腰反りで板目肌(いためはだ・木の板の模様に似ている地鉄の文様のこと)に杢目肌(もくめはだ・木の年輪のような地鉄の文様のこと)が混ざり、そこに焼かれた丁子乱刃(ちょうじみだれば)の刃文(はもん)が醸し出す、派手で華やかな印象のある刀が多いです。

『相州伝』は鎌倉時代に鎌倉幕府が置かれたことがきっかけで発展した流派です。刀工のなかでも有名な正宗は相州伝の刀工です。相州伝の刀工たちが日本刀作成技術を飛躍させ、軽量でありながら耐久力に優れた刀剣を作り出せるようになりました。高温で刀身を熱し急速に冷やして行う焼き入れにより、刃文にあらわれる沸(にえ)が美しい相州伝の高い作刀技術は、後世の刀工たちに大きな影響を与えました。

『美濃伝』は鎌倉時代に大和など各地から移住した刀工たちが集まってできた五ヶ伝のなかで最も新しい流派です。室町時代以降は美濃国中部の関(せき)が中心的な拠点になりました。美濃伝が栄えた室町時代後期以降は馬上戦ではなく足軽による徒歩での集団戦へと変化したため、作刀の多くが太刀(たち)ではなく打刀(うちがたな)でした。長くて重い太刀から、軽量で鞘からすばやく抜いて敵を切ることができる打刀が日本刀の主流となりました。

40 振り以上の刀や槍が展示されていて、とても見ごたえがありました!

展示を見ていると日本刀の置き方に刃が上向きのものと下向きのものがありました。
これは太刀(たち)と刀(かたな)の違いだそうで、刀のことは打刀(うちがたな)ともいいます。太刀と打刀はどちらも 2 尺(約 60.6cm)以上の刃長なので、長さでは区別がつきません。ちなみに短刀は刃長が 1 尺(約30.3cm)未満、脇差は刃長が 1 尺(30.3cm)以上 2 尺(60.6cm)未満なので長
さによって見分けられます。

太刀と打刀はそれぞれ身につけ方の違いから、ふだん柄(つか)の中に収められている茎(なかご)と呼ばれる部分に刀工の名前などの銘(めい)の刻まれた面が判断材料のひとつになります。

日本刀は基本的に茎の表に銘をいれます。
刀を抜く手が右手だったので、太刀も打刀も体の左側に身につけます。

太刀は刃を下にして体の腰帯に吊り下げるのが基本です。これを腰に佩く(はく)といって、太刀を身につけることを佩刀(はいとう)といいます。体の外側になる面を佩き表(はきおもて)といい、太刀を作刀した刀工は佩き表となる茎に銘を刻みました。

打刀は刃を上にして腰帯に鞘(さや)を差し込む状態で身につけます。帯に刀を差すので帯刀(たいとう)といいます。太刀と同様に腰帯に差した時、体の外側になる面を差し表(さしおもて)といい、多くの打刀は差し表の茎に銘が刻まれました。

例外もありますが、刃は実際身につける向きと同じにするそうで、太刀であれば下向き、打刀や脇差・短刀は上向きで展示されているそうです。

刀剣博物館では日本刀の基礎知識(Basic Knowledge of Japanese Swords)のリーフレットが配布されています。部分名称や地鉄・刃文の説明なども載っています。日本語版と英語版がありますので、持ち帰ってじっくり読むのも楽しいですよ!

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melon bread
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博物館&美術館鑑賞・舞台鑑賞など、心のおもむくまま記事を書いています。

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