映画『侍タイムスリッパー』に日本を感じる

『それがし、「斬られ役」にござる。』というキャッチコピーと、美しい夏空が印象的なフライヤービジュアルの映画『侍タイムスリッパー』は、ちょうど1年前の夏に東京は池袋シネマ・ロサという映画館の単館上映から始まりました。自主製作映画ながらSNSで話題を呼び、公開から1か月余りで上映館は全国140館以上に拡大した異色の時代劇コメディです。

監督の安田淳一氏は、2023年から実家の米作り農家を継ぎながら、脚本、原作、撮影、照明、編集・VFX、さらに車両からチラシ作成・パンフレット製作などを一人でこなしてこの映画を作り上げました。

物語は幕末の会津藩士・高坂新左衛門が、現代の京都にタイムスリップし、時代劇の撮影所で“斬られ役”として生きていくというユニークな設定。本物の侍が虚構の世界に飛び込むことで、現代人とのギャップや文化の違いが笑いと感動を生み出します。

映画『侍タイムスリッパー』には、日本文化や言語に根ざした“日本ならではの表現”が随所に散りばめられています。
主人公・高坂新左衛門が現代で演じる「斬られ役」は、日本の時代劇に特有の職業。
これは単なる脇役ではなく、“美しく斬られる”ことに命を懸ける芸の世界であり、「わび・さび」や「職人魂」といった日本的価値観が色濃く反映されています。
立ち居振る舞いや殺陣(たて)にも「間」を大切にする日本の美意識が表れていて、派手なアクションではなく、静と動のコントラスト、呼吸のリズムが観る者の心を打ちます。

映画自体は「コメディ」ですので、笑いと涙の“間”を読む演出の切り替えが絶妙で、観客が“空気を読む”ことを前提とした演出が多く、日本人の感性に深く訴えかけます。

この映画は、タイムスリップという非現実的な設定を通じて、むしろ日本人が忘れかけていた“日本らしさ”を再発見させてくれる作品です。観終わったあと、ふと「自分の生き方」にも向き合いたくなる…そんな余韻が残ります。
笑って、泣けて、時代劇の本格的な殺陣も楽しめるおすすめの映画です。

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