食文化って大切
1990年代、私が10代の頃、英国への留学経験を振り返りながら、特にその時の食文化についてお話ししたいと思います。
この話は当時の実体験に基づくものであり、私見を含みますが、決して「イギリス料理がまずい!」ということを主張するものではありませんので、ご了承ください。
私は中学1年生の途中から一人で英国に渡り、日本の私学の寮で生活しました。今にして思えば、なんとか順調に過ごせたものだと感じます(笑)。楽天的で深く考えない性格が、その当時良かったのかもしれません。途中からの転校でしたため、寮には生徒が戻っておらず(夏休みで皆、日本に帰国していました)、飛行機に同乗したのは転校生だけでした。人が少なすぎて急に寂しくなり、ある日はホームシックに襲われた記憶が鮮明に残っています。
イギリスの食文化について話す前に、私が住んでいた寮では、イギリス人のケータリングスタッフが1日の食事を用意してくれ、皆で食堂で食べることが一般的でした。
一応、日本人向けのメニューもありましたが、ご飯は(スチームで炊かれるため、パサパサしたり水分が多かったりすることがありましたが)、おかずが出るのですが、これがまたあまりおいしくありませんでした。味付けが自分で調整する必要があり、見た目も大抵が茶色っぽく、食欲をそそるものは皆無でした。皆、ふりかけや持参の調味料で何とか食べるように工夫していました。それでも満腹感が得られない時は、こっそり自室でラーメンやパスタを作って食べていました。どうしても日本食と比較してしまう部分がありましたが、あまり美味しいと感じたことはありませんでした。唯一、金曜日のランチに出されるフィッシュ&チップスが皆の気分を上げるメニューだったことは覚えています(笑)。
ただし、見学旅行で訪れたイギリス国内の景勝地に宿泊したホテルの料理は、本格的なイギリス料理で、とても美味しかった記憶があります。日本食と比べると見た目やバラエティには劣るものの、一概にイギリス料理を評価することは難しいと思いました。
イギリス料理が「美味しくない」とされる理由には、文化的・歴史的な背景や食材の選定、調理法などが関与しているようです。以下にその理由をいくつか挙げてみます。
① 歴史的背景:
第二次世界大戦の影響: 第二次世界大戦中および戦後の食料配給制度の影響で、長期間にわたり食材の入手が困難でした。その結果、簡素な料理が主流となり、これがイギリス料理のイメージに影響を与えました。
帝国主義時代: イギリス帝国の拡大により、多様な文化の食材や料理が導入されましたが、これにより伝統的なイギリス料理が後退し、評価が低下したとの見方もあります。
② 食材の選定:
気候と地理的条件: イギリスの湿潤で寒冷な気候は、地元で入手できる食材が限られ、新鮮な多様な食材を得るのが難しいことがあります。そのため、保存食やシンプルな食材が多用される傾向があります。
③ 調理方法:
シンプルな調理法: イギリス料理は多くがシンプルな調理法で、味付けも控えめなものが多いです。これが他国の料理と比べて物足りなさを感じさせる要因となることがあります。
食事に対する意識については、イギリスでは他の国々と比べて、食事が栄養補給の手段として捉えられる傾向があり、味や見た目に対するこだわりが少ないとされることがあります。
国際的な影響としては、現代のイギリスでは多国籍料理が広まりつつあり、伝統的なイギリス料理の評価が相対的に低下することがあります。ただし、すべてのイギリス料理が「美味しくない」というわけではなく、フィッシュ・アンド・チップス、ローストビーフ、ヨークシャープディング、シェパーズパイなど、世界的に人気のある料理も多く存在します。料理の多様性や質も向上し、現代のイギリス料理はそのイメージを改善しつつあります。
インバウンドの需要が高まり、多くの外国人観光客が日本に訪れる中、メディアで取り上げられるのは主に日本料理への高い評価ですが、
何気ない食生活の中で、日本に生まれてよかったと思いながら、当時のイギリス料理と寮生活での食事を懐かしく思うことがあるとは夢にも思いませんでした。