
【日本の歌】椰子の実
名曲といわれる歌には、いくつかの共通点があるように思います。
わたしにとっての「名曲」の条件は、その歌がふいに頭の中に流れてきて、気持ちがあたたかくなったり、心が軽くなったりする——そんなふうに、日常の中でふと思い出され、そっと寄り添ってくれるような歌です。たとえば街を歩いているとき、仕事や学校からの帰り道、夕方に買い物に出かけたとき、そして季節が変わったときなど。
「椰子の実」は、わたしにとって、そんな大切な一曲です。作詞は詩人であり小説家でもある島崎藤村、作曲は大中寅二。ジャンルでいえば、日本の唱歌や童謡にあたると思います。
昨年は職場近くの横断歩道を渡っていた時でした。信号の音を聞きながらも、わたしの頭の中では「椰子の実」が流れていました。夏の暑い日だったのを覚えています。静かでやさしい音楽に美しい日本語が乗って、聴いていると心地よくなってくる素敵な曲です。 もちろん、そう感じているのはわたしだけではなく、これまでに多くの歌手にカバーされていることから見ても、それだけ普遍的な魅力を持っているということがわかります。

「名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実ひとつ」
という歌い出しが、とても印象的で、その瞬間、この物語に入り込むような不思議な感覚があるんです。どこか懐かしさのようなものが一気に心や身体に流れ込んで押し寄せてくる気がするのです。
といっても、わたしには、この歌に特別な思い出があるわけではありません。子どものころに親しんだわけでもないし、小学校でクラスメイトと練習して合唱大会で披露したこともない。もしかしたら音楽の授業で習ったかもしれませんが、はっきりとした記憶は残ってません。
それでも、何年かに一度は、ふとこの歌を思い出して、そのたびに「やっぱりいい歌だな。素敵だな」としみじみ感じ入るのです。そして幸せな気持ちに包まれます。テレビでもラジオでもなく、ネットでもサブスクでもない。自分の頭の中に歌が自然と流れてくるこの瞬間が好きです。私の頭の中にだけある特別なプレイリスト。
たとえば、海外の知らない曲でも言葉がわからないのに、なぜか懐かしさを感じたり、泣きそうになったりということがあると思います。専門家ではないので音楽的な理論はよくわかりませんが、きっとそういう曲には、人の心を打つ共通の「想い」のようなものがあるのでしょうね。 インドネシアにもそんな曲があったら是非教えていただけたら嬉しいです。

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”日常を少し違った視点で見てみる”をテーマに
自分の周囲、半径5メートル位にあるものなどについて書いています。
音楽やアート、文学が好きなグラフィックデザイナー。
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